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vol.35 『ふにゃふにゃはコイツのせいかっ!』

 エレベーターって「怖い」って感じた事ないですか?
 このメルマガでも、ちょくちょく出てくる話題ですけど
 たま~に、ものすごく怖く感じる事があるんですよ。
 おばけが出そうとか、閉所恐怖症とかではなくて
 あの機械自体が怖い。
 飛行機はどうして墜落しないの?とか、鉄の塊の船が何故浮くのか?
 言ってみればそういう感覚。
 だってあれ、上から吊ってるようなもんでしょ?
 いやもちろん他にも支えはあるんでしょうけど。
 (そうじゃなかったら、もう乗れない!)
 下から床全体を支えているわけじゃないですよね。
 構造知らないから、もンのすごく怖くなる時があるんですよね。
 
 この床抜けたらどうしようっ!
 なーんてね。
————–2005/06/20 発行 第35号———————–
 
 


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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『ふにゃふにゃはコイツのせいかっ!』
 「マジかよ!(怒)」
 突然エレベーターが止まった。
 その日は、午前指定の荷物が多くて…多くて…多くて…
 (いや本当、午前指定が60件もあったらキツイって)
 時間が無いんですよ。
 3分に1件配達したって3時間かかるわけでしょう?
 もうシャカリキになって走り回っている時ですよ。
 時刻はすでに11時を回っています。
 そんな時に…。
 (くそう…。これじゃあ、間に合わなくなるじゃないか!)
 大体、このエレベーターに乗るときから嫌な感じがしたんだ。
 乗った瞬間に、こう「ガクッ」ってちょっと下がったし、
 それに床がふにゃふにゃなんですよ。
 お化け屋敷で、突然床がコンニャクみたいになる所があるでしょ?
 あんな感じですよ。
 それをエレベーターでやるなよなっ。
 やっぱり少しビビるじゃないか!
 しかし、そんな事で怒っていても仕方が無い。
 どうして止まったんだ?
 地震か?それとも単なる故障なのか?
 う~む。
 いや、そんな事を考えてる場合でもない。
 早く動けってーの、エレベーター!
 こんな時、さっさとエレベーター内の緊急電話で異常を知らせれば
 いいのだけれど、ボクって奴はいつも楽観的なんですよね。
 「そのうち動くだろ」
 でもさぁ、そんな事言ってる場合じゃないんですよね、今は。
 午前指定がまだたくさん残ってるんだからさ。
 
 ボクの行動らしくなかったけど、
 この時は結構素早く電話したんですよ、緊急電話。
 『ボタンを押し続けるとセンターに繋がります』
 ふんふん、なるほど。それでは早速。
 ボタンを押し続ける事5秒…10秒…30秒…60秒…
 …って、出ないじゃないか!壊れてるんじゃないのかコイツ!
 指だって痛くなるし。
 むう…。そうか!携帯だ。
 携帯で連絡すればいいんだよ。連絡先ここに書いてあるし。
 …って圏外かよっ!?
 そりゃそうか。
 エレベーターの中だもんなぁ。
 くそう、やっぱりこの緊急ボタンしかないかぁ。
 気を取り直して、もう一回。
 ボタンを押し続けて5秒…
 「はい。緊急センター。どうしました?」
 うおっ!出た!
 こんなに早く出るとは思ってなかったからドキドキしちゃったぞ。
 壊れてるんじゃなかったのか。
 「あ、あの、午前が間に合わな…いやそうじゃなくて、エレベーター
  止まっちゃってるんですけどぉ。どうしたらいいですか?」
 そうしてエレベーター番号なるものを伝えると
 「それではこれから向かいます。40分程かかります」
 なぬっ!?40分だぁ?
 もう11時過ぎてるんだよ。40分って言ったら残り20分しかない。
 それじゃあ午前指定が…。
 「そ、そうですか。じゃあ待ってます…」
 そう言ってしまうんですよね。ボクって奴は。
 だってエレベーターに閉じ込められている以上、待つしかないもん。
 でも午前指定のお客さんに何とか連絡取らなくちゃならないな。
 携帯どうにか繋がらないのか?
 狭いエレベーターの中で携帯をあっちこっち振りかざしてみましたが
 どうにもこうにもなりません。
 仕方ないかと諦めていると、突然携帯が鳴り出したのです。
 あわてて画面を見るとデポから!
 うおっ、タイミング良い!よく繋がったなぁ。
 「あ、柏城さん?再配なんだけど…」
 「いや、それどころじゃないんだ」
 エレベーターに閉じ込められている事を伝えて
 さらにまだ午前が残っている事を伝えました。
 デポには伝票の控えが残っているので、これでお客さんに連絡が取れます。
 そうこうしているうちにエレベーターがガクンと動き始めたのです。
 そしてドアが開いて
 「もう出られますから~」
 なんとも間延びした声でエレベーターの会社の人が来てくれました。
 まだ10分しか経ってないぞ?
 でも早く来てくれた事で文句があるわけもない。
 しかし…エレベーター途中で止まってるじゃないか!
 廊下とエレベーターの床の位置がずれてて、エレベーターの上50cm
 くらいしか開いてない。
 「お願いします。ちょっと急いでいるんで」
 「は~い」
 さっそく修理を始めているんだろうけど中からは状況がわからない。
 よく工事現場で見かけるパイロンが立てられたのは見えたけれど。
 でもしばらくすると音がしなくなったんです。
 おーい何処行ったんだぁ?
 するとカツカツと足音が聞こえてきました。
 お、戻ってきたか?
 でも足音の主はエレベーターの前まで来ると、立ち止まったようです。
 修理中とか張り紙してあるのかな?
 ちょっと上を見上げると、なんとそこにいたのはミニスカートの女性。
 
 丸見え…。
 …閉じ込められるのも、た、たまにはいいかな…。
 諦めて階段へ向かう女性の次に現れたのは声からして小学生。
 男の子が5~6人いそうな賑やかさです。
 「うおーい、エレベーター止まってんぞ?」
 
 「ホントだ。あ、誰か閉じ込められてるぞ!」
 お、チャンス。
 修理の人探してもらおう。
 ところが…
 「おまえ、何やってんだよ?」
 耳を疑いました。
 ボクに向かって言ってるんですよ。「おまえ」って。
 
 「『おまえ』じゃないだろ?ったく」
 そうやって言い返すと
 「閉じ込められてやんの!だっせー!」
 「ばーか」
 く、くっそう!
 なんでこんなガキどもにバカにされなきゃならないんだ。
 生意気なガキどもだ。
 そう思っているうちにピチャピチャと何かエレベーターの床に当たって
 います。
 (なんだろう?)
 そう思ったとたんボクの首筋に水がかかったのです。
 外のガキどもが水鉄砲(今はライフル型の威力があるやつなんですねぇ)
 で、水をピュッピュッかけてきてたんですよ!
 「何やってんだ!やめなさい」
 そんな事言って聞く相手じゃないですよね。
 「ばーか!閉じ込められてバカじゃないの?はっはっは!」
 ちくしょーーっ!
 くそガキどもがっ!
 エレベーターの中ですからね。逃げられないんですよ。
 水掛けられっぱなし状態。
 こらー!って言ったって止めない。
 そのうち一人の男の子が
 「おにいちゃん、オシッコしたい…」
 と、言うと水鉄砲でボクを執拗に狙ってきていた子供(くそガキ)が
 信じられない事を言ったのです。
 「ここでやっちゃえ!」
 漏れそうになっている男の子は当然…。
 
 
 ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ───……。
 (マジかよっ!!!)
 エレベーターの中に入ってくるぅ!落ちてきてる!流れてる!
 うえぇぇぇぇーっ!
 そこに
 「こらーっ!」
 やっと修理の人が戻って来たのでした。
 子供(くそガキ)達は、「うわー」とか言って逃げていきました。
 修理の人は、また間延びした声で
 「すいませんね~。今、上げますから」
 と、言いながら故障の原因を言ってましたが
 ボクはエレベーターの中なのにびしょ濡れ…。
 床からは強いアンモニア臭。
 泣きそうですよ。
 ドアが一旦閉じて再び開いた時は、ちゃんと廊下とエレベーターは
 同じ高さで止まっていて、ボクはやっと開放されました。
 が!
 
 エレベーターに乗り込んだ修理の人は、入るなり「臭っ!」と言い
 振り返ってボクを見ると、こう言ったのです。
 
 「あんたね~、エレベーターの中でオシッコしたらダメだよぉ~」
 ボ、ボクじゃねぇって!
 



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