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vol.22 『ある工場長の悲劇』

宅配 アスリートのバックナンバーをお届けしていますが、今回は2005年の1月にお届けした『ある工場長の悲劇』です。
前回の『おせちめぐり』を執筆中に思い出したお話で、内容はおせちの配達です。
さて、今回登場する「工場長」という人の名前の由来をお話しましょう。
宅配便 という仕事は、荷物を運ぶだけではなく、家具など組み立て商品の加工組み立ても請け負う場合があります。
その殆どは、お客さんの家で行う事が多いですが、時間の掛かるものは事務所で組み立ててから配達する事もあります。この時にまるで職人のような腕を見せるのが「工場長」です。
傷ひとつ付けずにありとあらゆる家具を組み立てる技術は、本当に職人技です。
そんな事から、いつしか「工場長」と呼ばれるようになりました。
 
————–2005/01/10 発行 第22号———————–


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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『ある工場長の悲劇』
 前回の「おせちめぐり」の回で、お話ししましたが
 年末最後のイベント「おせち」の配送は、わりといい事が多いんですね。
 ご祝儀として高額のチップとかお寿司やお菓子を頂けたりする事も
 ありますし、たいがいのお宅ではニコニコしてくれますからね。
 でもやはり、トラブルってどこに転がっているかわかりません。
 そんな年末最後のイベントにもトラブる時はトラブるんですねぇ。
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 「工場長」はうちのデポでは新米なんですが、手先が器用な事を買われて
 組み立て家具の配送専門になった事から付いたニックネームなんです。
 工場長の見た目は最近の若者そのもので、アルバイトで入社した当時は
 コイツと上手くやれんのかなぁ?と思ったものですが
 実際話してみると礼儀も正しく、程よくカルい感じですぐにみんなとも
 仲良くなれたものです。
 でもちょっと抜けたとこもあって、
 これまでにたくさんの「宅配アスリート」的ネタも仕込んでくれていますけどね(笑)
 さて、その悲惨なおせち事件なんですが、
 舞台はエレベーター付きのマンションなんです。
 エレベーター…。
 本当に色々な事が起こる場所ですよね。
 宅配アスリートの「創刊準備号」もエレベーターの話でした。
                      *『vol.00 嗚呼エレベーター
 う…、今思い返しても恥ずかしい。
 ま、ボクの話は置いといて…っと。工場長の話を続けましょう。
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 オートロックマンションの呼出機
 (未だにコレの名前がわからん集中呼出機というそうですよ)
 で在宅確認した工場長。
 開いた自動ドアからエレベーターに向かって行きました。
 おせちは傾けたり出来ない品物ですから足取りは慎重です。
 工場長は初めてのおせちの配達で、かなり気を使っていたそうです。
 お客さんの部屋は9階。
 とてもおせちを抱えて階段で上る気にはなれないですよ。
 当然エレベーターを利用しようとした工場長を
 誰も責められないですよね?
 
 あいにくエレベーターは上の階で止まっていたので
 呼びボタンを押して待つとしばらくしてから
 エレベーターは1階に着いてドアを開けました。
   工場長の悲劇はエレベーターのドアがガラス張りでなくて
   中が見えなかった事だったのか?
   あのエレベーターのドアがガラス張りだったなら…。
   ボクも何度も経験あるんですが、中が見えないただの鉄板ドアでは
   中に人がいるかどうか分からないけれど「いる」と思って
   ドアが開いた時に、一応脇へ避けたりするんですが
   実際に人が降りてくると、「ドキッ」とするんですよ…。
 開いたドアから、だしぬけに飛び出してきたのは
 なんと「スクーター!?」
 しかもエンジン掛けっぱなし!
 ドアが開いた瞬間に
 ビィィィィィィ~~ンって!?
 自転車をエレベーターに乗せて自宅前まで持っていく人はいるけど
 原付のスクーターまでもっ?
 オマケにエンジン掛けっぱなしで?
 ドアが開くの待って、ビィィィィィィ~~ンって!?
 マジかよ!
 …ビックリしたそうですよ。工場長は。
 うわぁぁっ!ってなったそうですよ。工場長は(哀)
 結果どうなるかって?
 
 そりゃあ、ビックリした時のお決まりのポーズをしたんだそうです。
 ええ、うわぁっ!って両手を振り上げて飛び退いたんです。
 その結果スローモーションのように床に落ちていくおせち。
 迫るスクーター。
 次の瞬間、この日一番聞きたくなかった
 グシャ。
 おせちを踏みつける音を聞いたそうです。
 
 スクーターは一旦停止したそうですが
 振り向いたジェットヘルからのオバサンの睨みつけるような
 鋭い眼光と「危ないわねぇ」という一言に工場長の思考回路は
 一瞬停止してしまったそうです。
 何も言えずにただ立ちすくみ、潰されたおせちを見つめる工場長。
 その時確かに走り去るスクーターのオバサンは「ふん」と言ったそうです。
 ゆっくりと潰れたおせちを手に取り、デポに電話をしようとしたそうです
 が、そこで自分の置かれた状況に気付きました。
 オートロックの呼出機で、工場長は
 「おせちですよ~。これから9階まで届けちゃいますよ~」
 と身分を名乗っているんです。
 つまりお客さんは、今か今かと玄関先で待っているはずなんです。
 悠長にデポに電話している暇なんてないんです。
 潰れたおせちを持ってお客さんの所まで行くしか選択肢はなかったんです。
 その時の工場長の気持ちを考えると笑っちゃう……いや、もとい!
 可哀相で可哀相で…。
 カンカンに怒られたそうです。
 その後にデポに電話してきたのですが、おせちは作り置きしている商品
 ではないので、代替品を用意できないのです。
 製造元やお客さんの希望を聞いて新たなおせちを作り直すことになったわ
 けですが、お客さん、会社、製造会社の3者から責められ怒られ怒鳴られ
 ての、さんざんな日になってしまいました。



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