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vol.26 『雪山の宅配アスリート デポ編』

 さて、今回は愉快な仲間たちの一人である
 「ジョーさん」に登場していただきましょう。
 あだ名って、いろいろありますよね。
 例えば「渡辺さん」なら「ナベさん」とか
 「金田さん」なら「カネやん」とかね。
 じゃあ、今回の「ジョーさん」は?
 お察しかと思いますが「あしたのジョー」からきているんです。
 いや、昔ボクサーだったとかそんなんじゃなくて
 カラオケで、あのテーマ曲を尾藤いさおばりに歌った事が
 発端なんですけどね。
 このジョーさんの特徴は、とにかく体がデカイ。
 190センチくらいある。しかも横幅もデカイ。
 そして熱血漢!
 もう宅配に命掛けてます!って感じで仕事している人です。
 だからといって本当に命掛けようとしなくても…(泣)
————–2005/02/14 発行 第26号———————–
 
 


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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『雪山の宅配アスリート デポ編』
 ボクの住む街には、ほとんど雪は降らないんです。
 降っても年に3~4回ってところですか?
 しかも積もるなんてことは滅多にない地方なんです。
 それが、あの年は凄かった。
 前日から降り続いた雪は、朝には見事な銀世界をつくっていたのです。
 雪に慣れていないボクですが、仕事は宅配便です。
 こんな雪の日でもクルマを運転しなくちゃならない。
 ところが出勤するために、駐車場からクルマを出すのでも一苦労。
 やっとの思いで出勤したのですが、デポも大騒ぎでした。
 雪に慣れていないのはみんな一緒。
 なんと、荷物が着いていないんです。
 そうなんです。
 センターからデポに荷物を運ぶトラックが、雪のため運行出来なくなって
 いたのです。高速や主要道路は通行止めになっていたのです。
 みなさんもニュースで見たことがあると思いますが
 雪の降らない地方では、積雪2~3センチでも交通網はマヒしてしまう。
 今回は例年にない積雪で完全に交通網はマヒしてしまったのです。
 そんなわけで、デポでは到着の遅れている荷物を待つかたわら
 前々から今日荷物を配達すると約束していたお客さんに電話しています。
 雪の為に到着時刻が遅れますとか、
 別の日に配達日を変えていただく相談などのためです。
 幸い、ボクの配達エリアでは今日必着の荷物はなかったのですが…。
 
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 「そうなんです。ええ、すみません。」
 ジョーさんも、お客さんに電話していました。
 ジョーさんは、ボクたちみたいな普通の宅配ではなくて
 家具などを専門に配達する仕事をしています。
 ボクや師匠(第12号に登場しましたね)みたいな、一人で持てる
 荷物を配達するのを「小物」の配達といい、家具や金庫など大きくて
 重い物を専門で配達するのを「嵩物(かさもの)」といいます。
 嵩物はお客さんの家の中まで入って設置するところまで仕事ですから
 ジョーさんは、体の大きさもさることながら、責任感も強いので
 嵩物の配達にはうってつけです。
 
 「はい、雪のために…ええ……え?…いや、そういう事では…」
 何やら揉めているようでした。
 どうしても今日届けろと言われているのしょうか?
 まぁ、お客さんからすると今日届けて欲しいのは当然ですよね。
 しかし、こうも交通網がマヒしていると指定日の配達は難しい時も
 あります。
 「わかりました。なんとかします…。」
 そう言って電話を切ったジョーさんは何だか疲れています。
 振り返ったジョーさんは辺りを見渡して尋ねました。
 「工場長は?」(第22号に登場でしたね)
 工場長はまだ出勤していません。
 工場長からは朝に電話が入り、クルマが駐車場から出せないので
 電車で出勤するという連絡が入っていました。
 その事を伝えると、
 「うーん。電車で出勤するのに、まだ来ていないのか?」
 「そうですよ。電車も大混乱ですよ。ほら。」
 誰かがテレビを指差しました。
 そこには、電車もかなりの遅れが出ている事を伝えるニュースが流れていました。
 「うーん、工場長はいない…。となると……柏城っ!」
 「はい?」
 
 「今日、オマエ嵩物な。」
 「はぁ?嵩の配達あるんですか?」
 すると、ジョーさんは何やらメラメラ燃える目で腕組みしながら
 ボクを見つめ返しました。
 なんだか、嫌ぁ~な予感…。
 「ある。○○町だ」
 そこは、このデポで受け持つエリアの中でも一番坂道の多いエリアです。
 つまり「山」です。さらに聞くと、その中でも一番キツイ坂の所です。
 おまけに幹線道路からは離れているので、クルマの通りは少なくて
 今日の雪の影響はモロに受けていると思われるエリアなのです。
 「マジっすか!無理ですよー。この雪じゃ行けないでしょ」
 「あぁ、確かに今日はキツイ。俺もそう思った。だからお客さんに電話
  した。雪のために配達日を変えてもらおうとしたさ。でも今日欲しい
  と言っているんだ。」
 ジョーさんの名誉の為に言うと、
 雪降っているから配達に行きたくないという事ではないんですよ。
 クルマで配達に出ることが難しくて、電話をしたんです。
 雪で滑るのならスタッドレスタイヤを履けばいいじゃないか。と全国から
 突っ込まれそうですが、そういう事ではないんです。
 この雪ですからね、スタッドレス装着のクルマも用意してあります。
 チェーン装着車もあります。
 でも、そういう事ではないんですよ。
 ここが雪の降らない街という事が原因なんです。
 例えば、道路で一般の人のクルマが雪でスリップしてハマって動けなく
 なっているとしましょうか。いや、実際街の中はそんなクルマばかりなん
 ですよ。
 すると後続車はどうしますか?
 当然、そのハマってしまっている障害物のクルマを避けようとして轍を
 外れて反対車線にはみ出して抜かしていくじゃないですか?
 そうすると、轍を外れたことによって今度はそのクルマが道路を斜めに
 塞いでハマってしまうんですよ。
 そうやって道路はマヒしていくんです。
 こういう雪の降らない地方では、スタッドレスを持っている人は皆無です
 からね。チェーンだって持っている人は殆どいないと言ってもいい。
 そして雪の経験なんてものも皆無だから、ノーマルタイヤでこの雪の中を
 クルマで出かけてしまうんです。そして立ち往生してしまう。
 だから、ジョーさんは配達時間も約束出来ないし、配達日を変更してもら
 おうとしていたのです。
 ところが、話をしていくうちにお客さんはこう言ったそうです。
 
 「うちのマンションには屋根があるよ。地下駐車場だからな」
 「雪がなんだって?別に雪が降っていても平気だよ。地下の駐車場なんだ
  から。濡れないし、何にも気にしなくてもウチは雪の影響受けないよ」
 いや、あのね。
 そこに行くまでが大変なんですよ。
 そりゃ屋根はあるでしょう。住んでいるんだから。
 地下ならなおさらですよね。
 それまで交通網のマヒを訴えていたジョーさんは何も言えなくなったそう
 です。そこに行くまでが大変なんだといくら言ってもわかってもらえなか
 ったそうなんです。
 そして先にも述べた通り、ジョーさんは熱血漢です。責任感が強いです。
 そして今はメラメラと目が燃えています。
 やる気なのです。
 行く気なのです。
 この雪の中へ。
 
 「柏城っ!クルマを用意しろ。行くぞ!」
 「げぇ!!何でボクなんですかぁ?」
 嵩物の配達員じゃないのに~。
 後ろで師匠の馬鹿笑いが聞こえていました。
 
 
 
 
                 ☆次回、怒涛の「雪山編」につづく!
 
 



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