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vol.34 『アポイントは取ってあるんですが…』

 「宅配便でーす」
 という声を聞いてドアを開けると強盗だった。
 毎年必ず起きるこんな事件。
 そんな事件が増えたからなのか、最近は居留守が多いんですよね。
 明らかに在宅している生活音がしていたのにチャイムを鳴らした瞬間に
 ピタッと音が止むんです。
 そんな時は
 「宅配便です」
 と声をかけるとドアを開けてくれますけど、
 どうにもこうにも開けてくれない人もいるんですよね。
 疑うなら「どこからですか?」と聞いてくれればいいんですけど
 ただじっと身を潜めるように居留守を使われると、どうにもなりません。
 そういう事で泣かされる事も最近は多くなってきました。
 
 
————–2005/05/11 発行 第33号———————–
 
 


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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『アポイントは取ってあるんですが…』
 
 ある日の出来事です。
 不在で持ち帰った荷物の再配達の連絡が入りました。
 その地域に、ちょうど別の荷物で再配達に出発するところだったので
 10分ほどで伺えると内勤に伝えてもらって出発しました。
 時間はすでに夜間配達の時間帯で、辺りは薄暗くなってきました。
 現地に着くと、中から物音がしていました。
 ドア横にある電気のメーターはグルグル回っています。
 再配達の連絡を受けて配達に行っても「不在」って結構あるんです。
 
 「ちょっと出ちゃったのよね~」
 「用事が出来ちゃって…」
 そりゃあ、そういう事もあるだろうけれど、ガックリきますよ。
 押し売りに来ているわけじゃないんだから。
 約束したらちゃんと居て欲しいですよね。
 ところが、最近はそんな事があっても
 「持ってくるのが仕事だろ!こっちはお前が来るまで待ってなきゃ
  いけないのか!今すぐ持って来い!!!」
 と、こういう人が多いんです。一日に何件もあるんです。
 「そうです。仕事ですよ。ボランティアじゃないんです。
  配達という仕事なんですよ。使いっ走りじゃないんですよ?
  最初の1回目は、予告無しの配達だから不在でも仕方ないけれど
  再配達では、お客さんの時間に合わせているでしょう?
  だ・か・ら、何度も約束破ったらその分の配達料金頂きますよ。」
 と、言ってやりたいですよ。
 最近、ここを勘違いしている人が多いんです。
 宅配便は宅配便であって、貸切チャーター便ではないんです。
 貸切チャーター便っていうサービスは、ちゃんと存在しますよ。
 有名なのは「バイク便」がありますよね。
 これはまさに、ドアtoドアのサービスです。
 依頼者から荷受人まで直接届けます。
 時間なども希望に合わせる事も可能です。
 まさにお客さん個人の希望に合わせた配達が出来ます。
 四輪でも同様のサービスはたくさんあります。
 それこそ数え切れないくらいあります。
 それらは総称して「チャーター便」といいます。
 そしてこのサービスは誰でも利用できます。
 しかし配送料金が高い。
 ある意味「引越屋さん」もこの一種ですからそのくらいの金額はかかる
 と思えば理解しやすいかもしれません。
 例えば会社で何か書類などを、宅配便で送ろうとしていたのに
 間違って「バイク便」などのチャーターを利用してしまったら…
 宅配便に比べたら、とんでもない金額になっちゃいますよね。
 飛行機で例えるなら宅配便は「ジャンボ旅客機」なんです。
 利用者の希望を考慮して効率の良い飛び方をする。
 そこに乗る乗客のすべての人に公平なサービスをする。
 個人個人の都合は聞きたくても他の「迷惑」になるならそれは採用出来な
 いし、コストの面でも無理な場合が多い。でもその分、割安なんです。
 チャーターは、そのまま「チャーター機」です。
 融通が利く分、料金は高い。
 大事な事ですが、利用者はどちらがいいか選べるんです。
 
 そして荷物を発送した人は「チャーター」ではなく「宅配便」を選んだん
 です。宅配便の値段の安さとそのサービスを選んだんです。
 しかし、荷物を受ける人はチャーターと同様のサービスを要求して
 激しいクレームを入れる。
 そのクレームの内容も、最近は滅茶苦茶です。
 ジャンボ旅客機なのに「おい、そこで降ろしてくれ」とか
 「急いでるんだよ。予定時刻早めて飛べよ」とか言ってるようなもんです。
 ミスタードーナツに行って「ビックマックくれ」
 と言っているのと同じですよ。
 八百屋に行って
 「どうしてお前のところは魚をおいてないんだ?」とかです。
 そういう事を言っているのに気が付いていないんですよね。
 宅配便業者は競合が多いんです。
 荷主は、問題が起きると次から次へと配送業者を変えます。
 (そうして一回りして戻ってくる事もしばしばありますが)
 それで、泣く泣くその要求に答える。
 これって宅配便だけじゃないですよね。
 どんな業界でも似たような事が増えてませんか?
 正当なクレームならどんどん入れればいいんです。
 でも、あまりにも理不尽なクレームが多すぎると思うのです。
 
 …でも考えてもらいたいのです。
 そこで「わがままな要求」を聞き入れると
 皺寄せは必ずどこかにでるんです。
 つまり「他のお客さんの荷物の配達が遅れる」という事です。
 その「他のお客さん」が、自分だとしたら?
 ギリギリまで料金を下げてたくさんの荷物を運んでいるんです。
 至れり尽くせりの最高級のサービスよりも、
 荷物を届ける事に専念してそのサービスをキッチリやる。
 そして値段はギリギリまで下げる。
 それが宅配便なんです。
 普通に利用すれば、なんら問題は無く荷物は手元に届きます。
 朝出せば夜には届く時代です。
 それ以上を望むなら、それは「チャーター」を利用するしかないのです。
 宅配便の10~100倍の値段を出せばいいんです。
 宅配便は宅配便として最上の努力とサービスをしているんです。
 話が横道に逸れましたが、えー……っと、そうそう!
 再配達に行ったんですよね。
 
 そうしたら、中から人がいる音はするし、ドア横のメーターはグルグル
 回っていたんですよね。
 だからボクは、ちょっとホッとしながらチャイムを鳴らしたんですよ。
 ところが、ピタッと止まったんですよ。音が。
 ま、この時は玄関に「はーい」と出てくるために何かしていたのを
 やめたから音が止まったんだと思ったんですが、いつまで待っても出て
 来ないんです。
 あれ?そう思ってまた鳴らしてみますが、反応無し。
 軽くノックしてみても全く反応無し。
 宅配便で~すと言っても全然反応無し。
 玄関前で電話したけど出ない。
 ドア横のメーターは相変わらず、グルグル回っているというのに…。
 でも仕方ない。やる事はやった。
 中に居るとしても、こちらが呼んだのが聞こえなかったとしても
 ドアを開けて入るわけにもいかないし、不在票を入れて帰るしかない。
 せっかく来たのになぁ…。
 仕方なく不在票を書いて荷物は持ち帰ったのです。
 ところがクルマに乗るとすぐに携帯にデポから電話が来たんです。
 
 「柏城さん?○○さんなんだけど…」
 「おぅ、たった今行ったけど居ないよ」
 「それがね…居たって言うのよ。もう一度行ける?」
 「うん、いいよ。まだ○○さんのマンションの下だからすぐ行く」
 そう言ってまたクルマを降りました。
 やっぱり居たんだ。トイレだったのかな?
 ま、無駄足にならなくて良かったぁ~。
 勢いよく階段を駆け上がってお客さんの部屋の前へ!
 そしてピンポ~ン。
 
 …ん?
 しばらくして、もう一回、ピンポ~ン……
 ……んん?
 おっかしいなぁ?
 今電話来たはずなのに…。
 外に出てったなら階段で出会ったはずなのに。
 電話してみるかな?
 プルルル…。
 家の中で鳴っているのは聞こえるけど。
 なんで居ないの???
 くっそ~。
 仕方ない。また不在票だ。来た証明だからね。
 そしてガックリきながらクルマに戻ると、また電話!デポから。
 「柏城さん?○○さんなんだけ…」
 「今行ったよ。居ないんだけど」
 「そ、それがね、居たって…」
 「あぁ~ん?今だよ!今行ったんだよ!?まだ家の前だよ」
 「え?そうなの?じゃ今もう一回行ける?電話繋がってるし」
 「わかった。今すぐ行く。30秒で行く」
 そしてダッシュ!
 階段駆け上がり競技なんてのがあったら、間違いなくトップだっていう
 速さで部屋まで駆け上がってチャイムのボタンにターッチ!
 ところが…出て来ない。
 ノックしてみるけど出ない。
 もしかしたら伝票の部屋番号が違っているのかとも考えたけれど
 それは考えられない。
 だって不在票入れてすぐに電話架かってきてるんだもん。
 もし間違っていて違う部屋に不在票入れてるとしたって…
 いや、やっぱ考えられない。
 部屋は正しいはず。
 電話も架かってきてる。
 じゃあ、なんで?なんで居ないの?
 また、電話するのぉ?
 経費と考えたら電話代だって馬鹿になんないよ。
 と、思いながら電話を架けてみると、話し中!!
 なんだよ、もしかして電話中だから玄関に出られないっていうの?
 何回も来てるんだよ。
 どんな理由でも、玄関に出てこなければ
 宅配便にとっては「不在」なんですよ。
 玄関開けて肩叩くわけにいかないですからね。
 そうじゃなければ「今ちょっと手が離せないから」
 とか言ってくれればいいのに。
 そういうのも何にも無ければ不在ですよ。
 また不在票書くの?
 くそ~…。電話終わるまで待つか…。
 あ、そうだ!デポに電話しよう。
 「あ、柏城だけど、また出ないよ○○さん」
 「ちょっと待って。ジョーさんが、その電話出てるから」
 
 「あ?デポと話してたの?じゃあ言ってよ、玄関前に今居るって」
 「いやそれがね……」
 その後の話をまとめるとこうです。
 ジョーさんが電話で話していた時に電話の向こうからチャイムの音が
 聞こえたんだそうです。
 それでジョーさんは「今来たようですね」と言ったところ相手は
 「そんな事どうしてわかるんですか?
  誰だかわからないじゃないですか?」
 と言ったそうです。
 しかしボクが30秒で行くと言った事などから考えて
 それがボクだと確信したジョーさんは
 「でも、どなたかみえたようですよ?
  ウチの配達員かもしれません。すぐ目の前にいるという話でしたから」
 しかしその客は、
 「そんな事わかりません!」
 と言ってきかなかったそうです。
 そう言われてしまえばしょうがないです。
 仕方なくジョーさんは「そうですか。でもすぐに伺うと思います」と
 電話を切ったそうです。
 その時はボクはまだ玄関先で待っていましたが、
 待てど暮らせど出てこないし、
 その後の電話にも何度架けても出ないんです。
 こんな時は、どうしたらいいですか?
 ボクは仕方なく不在票を書いてクルマに戻りましたよ。
 するとまたデポから電話ですよ。
 この客の、再配達の電話4回目。
 「居るんだって…。」
 でもご想像の通り、また出て来ませんでした。
 この時、この客は言ったそうです。
 「誰が来ているのか分からない。宅配便だと外から声が聞こえているが
  それが本当だと誰が決められる?」
 と言うそうです。
 さらにこの客は続けます。
 その宅配便か誰かわからない人間がいなくなってから
 そっとドアを開けると不在票が入っていた。と。
 そして最後にこう言ったそうです。
 「私は不在票が入っていたので再配達の電話をしている。
  至極まともな事をしているのに、こんな対応でいいのか?
  絶対に宅配便だと証明する方法を考えて欲しい。
  こんな対応では荷物はいつまでたっても受け取れない」
 …アポ、取ってるじゃん。
 どうしたらいいってのよ?
 結局、その荷物は後日ご主人に事情を説明して
 ご主人のいる時間に届けました。
 都合5回目で完了しました。
 
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