宅配便 痛快ドタバタ活劇!

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「TAKUHAI ATHLETE」データベース
バックナンバーをまとめたページです。簡単な説明付き。


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2006年6月 7日

vol.51 『地球外生物がやって来た!』

 「巨人大鵬玉子焼き」と、言えば
 東京オリンピックが行われた頃の子供の好きな物の代名詞ですよね。
 高度成長時代の子供達が夢中になったものを例えているそうです。

 ま、ボクはもうちょっとその時代よりは若い世代なんですが
 ボクが子供の頃でも、夢中になったものがありますよ!

 水曜スペシャル!
 川口探検隊ですよ~!

 それに、矢追純一ですよ。
 UFOですよ、宇宙人ですよ。
 ノストラダムスの大予言ですよ!


 いやぁ、夢中になって見てましたねぇ。
 あのバイタリティには子供心にも驚嘆しましたね。


 『アマゾンの奥地に謎の巨大生物は実在した!!』

 『今夜、東京上空にUFOが現れる!』


 な~んてテロップが出ると興奮してね。

 チャンネル争いになったりすると
 チャンネルのダイヤルを「ポコッ」と
 取って隠しちゃったりしたもんですよ(爆)

 良い時代でしたねぇ。
 今は、そういう冒険番組って数少ないですもんねぇ。
 あんなバイタリティ溢れる人もいなくなったんじゃないかな?


 …ところが、いたんです。
 繁忙期のアルバイトに来たんですよ!
 そんなバイタリティ溢れる人が!

 いやぁ、ボクは好きだったなぁ、あの人。
 仕事以外なら、ちょっと友達になりたかったのになぁ。
 
 だって宇宙人と交信出来るんですよ!その人。
 その人から見ると、街を歩いている人の2%は
 宇宙人だって言うじゃありませんか!!

 びっくらこいちゃいますよ。

 いや、冗談じゃなく本当に面白く話を聞いていたんですよ、ボク。
 もっと楽しい話を聞かせてもらいたかったんだけど… 

 
 どうです?
 読者の皆さんは、宇宙人っていると思いますか…?
 
 


--------------2005/12/11 発行 第51号-----------------------
 

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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『地球外生物がやって来た!』

 
 「…緑色なんですよ。匂い?あぁ、腐ったような匂いもしますね」

 「へえぇ…」

 その男性は30代前半くらいでした。
 メガネの奥の瞳は小さいけれど真剣で
 いつもボサボサの髪が研究に没頭している感じで
 話す言葉に妙なリアリティを感じさせていました。

 メガネのボサボサ頭の研究者はTMさんといいます。
 今回の繁忙期にアルバイトとして来てくれた人です。
 
 地球外生物の研究を独自にやっているそうです…。
 面接の時に堂々とそう言ったんですから大したものです。


 正直、周りには煙たがられていたTMさんでしたが
 ボクは好んで話しかけていました。

 子供の頃の好きなテレビ番組を見ているようで
 結構ワクワクしながら「それで!それで!?」と
 話を聞くのを楽しみにしていました。


 今日の話題は「街をうろつく宇宙人」なんです。

 TMさんには、宇宙人が見えるそうなんです。
 『見える』というと何だか一般人には見えない感じですが
 TMさんによると「一般人には宇宙人も一般人に見える」という事なの
 だそうです。

 つまり、宇宙人が仮にその辺を歩いていたとしても
 ボクらには、何も変わらない普通の人として見える…
 と、こういう訳ですね。

 ところが!
 TMさんの目はごまかせない。
 宇宙人がいくら普通の人の格好をしていても、見抜ける!
 と、こういう訳ですな。

 …いや、決して馬鹿になんてしていませんって!
 ちゃんと真面目に話を聞いてますよ、ボクは。

 それで、「普通の格好なのにどうやって宇宙人だとわかるんですか?」
 と、聞いた答えが冒頭の会話なんです。

 むうう…。
 洋服を着ているのに、緑色…。

 わからん…。
 わからんが、面白い。

 しかも、匂いもあるとなッ!?
 すると、TMさんは目だけじゃなく、鼻でも宇宙人を見抜けると!
 こういう訳ですな?

 …すごいですな。TMさん。
 もっとお話伺わせてください。


 「柏城さーん」


 内勤の事務員に呼ばれたので、ボクは後ろ髪を引かれる思いで
 その場を離れました。


 「おう、何?」

 「柏城さん、またあの人と話してるんですか?
  なんか気持ち悪いですよ、あの人」

 「ん?結構面白いよ。宇宙人見えるっていうし」

 「宇宙人!ハッ、やっぱ変わってる…」

 「ま、悪い人じゃないしさ。話してる事は面白いし、いいんじゃない?」

 「そんな事言うの柏城さんだけですよ」

 「それで、何?」

 「あぁ、○○町の配達なんですけど…」


 仕事の打ち合わせをしているうちに、
 TMさんは配達に出掛けてしまいました。
 
 あ~あ、残念。
 もっと楽しい話聞きたかったのになぁ。
 TMさんはアルバイトで夕方には帰っちゃう契約だから
 今日はもう話聞けないなぁ。


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 と、残念に思っていたのですが
 なんと、今日はまだ話せる機会があったのです。
 
 時刻はもう夜間配達に入ろうかという時間帯です。
 普通ならTMさんは、とっくに帰宅している時間帯です。

 それなのに何故TMさんと話せるチャンスが訪れたかというと
 デポからの1本の電話がきっかけでした。

 
 「柏城さん、○○町にこれから行ける?」

 「え?あぁ、今日は夜間少ないからいいけど…
  なんだよ、クレームなら嫌だよ」

 「そうじゃなくて、TMさんなの。
  宇宙人がクルマに乗ってきたから怖くてクルマに近づけないって!
  もう、なんなのあの人!何が宇宙人よッ!まだ配達残ってるっていうし
  そんな馬鹿な事言ってる暇無いでしょうに。」


 さんざんTMさんの愚痴を言ってる事務員ですが
 ボクは、ワクワクしまくりです。


 宇宙人がクルマに乗ってるってぇ!?


 ウホッ!
 一体どんなヤツが宇宙人なんだ。
 どんな格好でいるの?緑色なの?腐敗臭漂わせちゃってるの?

 うひゃ~!
 絶対見てみたい!

 まだ電話の向こうで文句を言っている事務員でしたが
 ボクは構わず返事をしました。


 「行くよッ!今すぐ。何処?何処に行けば宇宙人が見られるの?」

 「ホント、何が宇宙人よねぇ。バッカみたい。」

 「だから何処だって!(宇宙人逃げちゃうだろ)」

 「…○○の6丁目の○○工業の前だって…」

 「おう!わかった。すぐ行く」

 「お願いね。『アンタが宇宙人だよ』って言っておいて」


 電話を切る事ももどかしく
 ボクは未知との遭遇に向けてアクセルをグッと踏み込みました。

 うひゃ~!
 TMさんは、一体どんなヤツを宇宙人って言ってるのか確かめられる!
 すっげー、楽しみです。


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 あの角を曲がると、目的の○○工業だという所まで来た時
 突然、その角からTMさんが飛び出してきました。

 うわッ!危ねぇッ!
 急ブレーキを掛けて何とかクルマを止めましたが
 急に飛び出してきて轢くところだったじゃないか。
 ドキドキするじゃないか。

 しかし、TMさんは、そんな事お構いなしで
 ボクのクルマに走って来ると、息を切らせてクルマの窓枠に手を掛けて
 叫んだのです。


 「H58星雲型のヒューマノイドだッ!
  マズイ…ヤツらは攻撃的なんだ。下手に近寄らない方がいい」


 H58星雲型…???
 なんじゃそりゃ?
 そいつがクルマに乗ってるのか?
 宇宙人にも種類があるのか?


 「ま、落ち着いてTMさん。一体何があったんです?」

 「落ち着いてられるかッ!柏城さんはわかってない!
  ヤツらの攻撃の強力さを。近寄れば死を覚悟しなければならない」


 薄暗くなってきていましたが
 TMさんの顔色が、青白くなっているのは感じました。
 それに、よく見ると汗なんか似合わないTMさんなのに
 今はポタポタと流れるくらい汗をかいていました。


 (むう…。本気で思ってるな、この人は。)

 
 正直言って、ここまで来ると少し引いてしまいます。
 H58だかヒューマノイドだか知らないけれど
 妄想さが思いっきり出てるぞ。


 でも…
 そこに…、そのクルマの中に何かがいるのなら
 ボクはそいつを見てみたい!

 何がTMさんを、ここまで怯えさせているのか
 確かめたい。

 何を見て、宇宙人だと言っているのか
 ボクは知りたい!

 
 「わかりました…。取りあえず本物なのか確かめましょうよ」


 ボクは必要以上にゆっくりとクルマを降りると
 怯えているTMさんの前に立ち、
 そろそろと宇宙人が乗っているというクルマに近づいて行きました。

 
 クルマが停まっている○○工業のあたりは
 住宅地からも外れていて、人もクルマも通らないような静かな所です。

 薄暗い中にハザードのオレンジ色の点滅が浮かび上ががり、
 半ドアなのか車内にはルームランプが灯っています。

 そのクルマの背後からボクらはそろそろと近づいて行ってるのです。


 …見た事があるシチュエーション。
 そう…、
 これはまるで映画「バックトゥザフューチャー」のワンシーンじゃないか。
 
 あのクルマの中に緑色の宇宙人がいるっていうのか?
 H58星雲から来た攻撃的なヒューマノイドが!?
 
 にわかには信じがたい話だけれど、TMさんの脅え方は本物だ。
 嘘を言って注目を浴びたいような感じでは決して無い。


 見たい…。
 出来るなら本物であって欲しい。
 今この瞬間、人類初の接近遭遇であればいい。

 夜のトップニュースは宇宙人が現れた!だ。
 ボクは歴史の目撃者になる。


 走って行ってバッとドアを開けたい気持ちでしたが
 ───もし…仮に…そんな事あるはずないだろうけど…
 TMさんの脅え方を見ていると…───
 腰を落とした姿勢で、そろそろとクルマに近寄って行きました。

 クルマの後ろから横へ…
 そしてもうすぐ運転席の全体を見渡せるという時に
 突然、TMさんが


 「危ないッ!!!」


 と、大声で叫んで、ボクの後頭部を思いっきり殴ったのです!

 グッ…!!
 一瞬、目の前が真っ暗になりました。
 こんなに思いっきり殴られたのは…初め…て……だ。

 殴られて気絶するなんて、
 テレビや漫画の世界でしかありえないと思っていたのですが
 この時、ボクは意識が遠のいていったのです。
 後頭部を押さえながら崩れ落ちました。


 「…TMさん?なんで…?」


 振り返るとTMさんは能面のような表情でボクを見下ろしていました。
 口元が何かを言っているようでしたが、
 殴られた痛みを必死で堪えているボクには聞き取る事は出来ませんでした。

 次の瞬間、
 TMさんはボクを抱き寄せて、こう言いました。


 「柏城さん!しっかりしてください!」

 「…くっ。な、なんで殴るんですか?」

 「危なかった。ヤツが…ヒューマノイドが襲い掛かってきたんだ!」

 「な、何を…」


 宇宙人だか何だか知らないけれど
 いきなり殴っておいて、そりゃないでしょう?
 襲い掛かって来ただってぇ!?

 ふざけやがって。
 アンタが殴ったんじゃないですか!
 なんだか無性に腹が立ってきました。

 …ところで、その宇宙人はどうした?
 クルマの方にボクが頭を向けると、TMさんは優しく囁いたのです。


 「もう、大丈夫。柏城さんが気絶している間にボクがやっつけた。
  ヒューマノイドは様々な技を繰り出してきて苦戦しましたが
  ボクも必死でした。今頃はH58星雲へワープしているはずです」

 「ボクには何も見えませんでしたが…」

 「そうか…、柏城さんには見えなかったのか。
  ヒューマノイドは透明になる事が出来る。ボクには見えていたが」


 ………………。
 ……。あほか。

 んなワケないだろうがッ!
 大体ボクは気絶なんてしてないぞ。
 
 えぇ?様々な技を繰り出してきただって!?
 それに応戦して戦っていたっていうの?
 それで、ボクはその間のんびり気絶していたっていうの?

 アンタが一人芝居、作り話してるんじゃないか!

 くそッ!
 まともに相手して損した。

 ………!!そうだ!仕返ししちゃおう(ニヤ)


 「TMさん、強かったんですね。どんな技で応戦したんですか?」
 
 「あぁ、一般人には見えないけれどボクは『気』を放出できる。
  何度も放出できるわけではないが、相手がヒューマノイドなら
  こちらも死ぬ覚悟じゃなければ勝てなかった。」

 「それじゃ、相手は…ヒューマノイドは傷つきながらワープですか?」

 「そうでしょう…。瀕死の重傷だと思います。
  あの身体ではワープに耐えられないかもしれません。」

 「それじゃあ、あのクルマにはもう誰も…?」


 ボクは後頭部を押さえながら立ち上がって
 クルマに近づいて行きました。


 「もう誰もいないでしょう。ボクがやっつけましたから」

 「そうですか。助かりました」


 そう言いながらボクはクルマに近づき、
 運転席のドアノブに手をかけました。

 そして、思いっきりドアを開けて叫びました!


 「ウワッ!なんだコイツは!」


 まるで内側からドアが弾かれたように開いた真似をして
 ボクは吹っ飛ばされたような芝居をしました。


 「か、柏城さん!?」


 あっけに取られるTMさんの前で
 ボクは「くそ!くそ!」と何かと戦っている芝居をしました。


 「ど、どうしたんですかッ!柏城さんッ!」

 「ヤツがまだいる!!コイツが見えないんですかッ!」

 「え?そんなはず…は…」


 ボクは宇宙人と必死で戦っている振りをしました。
 激しく腕を振り回して戦っている振りです。


 「か、柏城さん…?」


 TMさんは目を大きく開いて驚いている表情をしています。
 ボクは激しい動きで見えない相手と戦いながら
 TMさんの方へ近づいていきました。


 「TMさん、危ない!コイツTMさんを狙っています!」

 「じょ、冗談止めてくださいよ!柏城さん!」

 「見えないんですか!危ないッ!!」


 そして、両腕をぐわっと高々と上げて
 大声で「ウオラーッ!」とボクが叫んだとたんに
 TMさんは驚愕の表情になり
 「ぎゃー」と言いながら腰を抜かしたのです。

 …そして、なんとオシッコもらしちゃったんです。
 ガタガタ震えながらズボンの股の所から
 オシッコがジワジワ染み出してきてました。
 
 仕返しで軽く殴ってやろうかと考えていたんですが
 ボクの芝居でこれほどまでにビビッてしまうとは…。

 もういいか…。

 ボクはハッと我に帰ったように「大丈夫ですか!TMさん」と
 言いましたが、TMさんは「ごめんなさいごめんなさい」と
 泣くだけでした。


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 ある意味、純粋なんでしょうね。
 TMさんは。
 
 ただ、ボクの頭を殴ったのは何がしたかったんでしょう?
 普段から気に入らないボクを殴るチャンスを作ったのでしょうか。
 ただ、現場にボクが来るとは限らない訳ですし…。

 単に注目を浴びたかったのか。
 それともあの時、本当にH58星雲型の宇宙人がいたのでしょうか?
 
 真相はわかりませんが
 思い出してみると、水曜スペシャルの川口探検隊でも
 クライマックスになると突然トラブルが起きてしまったり
 UFOなどの番組だと突然にカメラが壊れたり…。

 実体験でそれと同じようにクライマックスでトラブルが起きたんだと。
 今回の事もそう思えばいい思い出ですか。
 テレビの延長を体験出来たんだと思えばね。

 …たぶん、あの時の出来事もTMさんにとっては本当なんでしょう。
 様々な技をかわして、『気』を放出したんでしょう。
 TMさんにとっては、それはすべて事実なんでしょうね。

 そうじゃなきゃ、ボクのあんな猿芝居であそこまでビビりませんよね。

 TMさんによると宇宙人と戦った者同士が近くにいると
 相乗効果で宇宙人が誕生してしまうという事なのだそうです。
 TMさんはボクも本当に宇宙人が見えていたと信じきっていたのです。

 そんな訳で、TMさんは去っていきました。
 
 残念です。
 一人芝居とか作り話とか思ってしまったけれど
 それはそれでよかったんです。ボクにとっては。
 もっと話を聞きたかったんですが…。

 ちょっとビビらせ過ぎてしまいました。
 




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