●vol.43 『喋るポスター』
選挙の日って宅配アスリート的には最悪の日なんですよねぇ。
そうなんですよ!
みんな出掛けちゃうから、不在が多くて
選挙の日は宅配業者にとっては大変な1日なんです。
今回は選挙にまつわる、こんなお話です。
--------------2005/09/13 発行 第43号-----------------------
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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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『喋るポスター』
「なんだってこんなに混んでるんだ?」
駅前に続く道路で渋滞にハマっていたボクは
クルマの中で、ひとりブツブツ悪態をついていました。
駅に続く道ですから、普段でも多少の混雑はあるものの
これほどの渋滞は初めてです。
なんたって、もう30分も身動きが取れないのですから。
「もう!午前中指定が間に合わないよッ!」
こんな所で渋滞に巻き込まれたままだと時間指定に間に合いません。
仕方なく、ボクは道を外れてクルマをUターンさせました。
大きく迂回する事にしたのです。
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裏通りからなんとか駅前に着いたものの、
渋滞は相変わらずで、駅に近づけません。
そうなんです。今日は駅前に配達ではなくて駅に配達だったのです。
仕方が無いので、駅からはまだかなり離れている所にクルマを停めて
歩いて行く事にしました。
渋滞中のクルマの脇を荷物を抱えて抜けていくと
駅前からは何やらマイクを通した声が響いています。
しかし、近づくにつれてクルマどころか、人も多く
駅前は黒山の人だかりになってしまっていました。
(なにやってんのかなぁ?)
興味はあったけれど、まずは配達。
もう、12時ギリギリです。
立ちはだかる人並みを縫ってなんとか駅に辿り着いた時に突然
「いやぁ!どうも!どうもッ!ありがとう!!」
誰かがボクの手を握ってきたのです!
(何ッ?)
そう思った瞬間、今度は肩を「バンッバンッ!」と叩かれて
「お仕事頑張ってくださいねッ!」
そう言われたのです。
反射的に「あ、はい」と言ったものの、誰?と顔を見ました。
するとボクの肩に手をかけたままニコニコ笑っていたのは
なんと○○党の党首。
よくみれば周りには選挙カーも停まっています。
(そうかぁ、選挙の応援演説に来てるんだな。だから渋滞なのか)
しかし、こんな配達員にまで握手してくるんだぁ。
と、びっくりしました。
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駅の配達を終えて、今度は住宅地の配達に向かいました。
案の定、不在だらけです。
みんな選挙に行ったのでしょう。
選挙に行ったついでに買物とか出掛けるのかもしれません。
党首に握手されるなんてハプニングはこれが初めてですが
選挙シーズンにいつも驚かされる事があるんです。
それは、選挙ポスターなんです。
ポスター?
意味わかんないですよね
実はあのポスターって、ちょうどクルマの窓の高さに貼ってあるんです。
だから宅配便でクルマを停めた時、
うっかりポスターの横だったりすると大変です。
配達を終えてクルマに乗り込んだ瞬間、ビクッとするんですよ。
誰かが覗き込んでるように勘違いしてしまうんですね。
夜なんかだと特に。ルームライトでかすかに照らされた笑顔にビクッ!
これまでに何回驚かせられた事か…。
今日は驚かないぞ。
と、思っているうちに
「お仕事頑張ってくださーい!!」
ビクッ!
おわぁ、ビックリしたぁ~。
あ、なんだ、選挙カーとすれ違ったのか。
いきなり叫ぶから…。
バックミラーで見ると、
まだこっちにニコニコしながら手を振っていました。
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不在に悩まされながらも、
なんとか配達を続けて、あたりも薄暗くなってきた時間には
ボクは山の上の住宅地の配達をしていました。
ある1軒の配達を終えてクルマに戻ると
助手席に人影が…。
(あ~ぁ、またポスターの所に停めちゃったのか)
そう思ったけれど、
今回は騙されずにクルマを発進させようとしました。
しかし、次の瞬間に突然恐怖が襲い掛かったのです。
誰もいないはずの助手席から、細くしわがれた声が…!
「駅前まで…」
ビクッ!
あまりの驚きで、後ろにのけぞって窓枠に後頭部強打!
「アガッ!」
イテテテ…。
何が起きたのかわからないうちに声の主が
「なぁ、早く行っておくれよ」
と膝に手を伸ばしてきたのです!
一瞬でボクの全身に寒気が走り
「うわぁぁぁぁぁーッ!」
と叫び声まであげてしまいました。
薄暗い車内で小さな影が助手席で蠢いているのです!
…でもよく見ると、
一人のおばあちゃんが助手席にちょこんと座っているのです。
「な、何やってるんですか?」
ボクが恐る恐る声をかけると
ニィっと笑って答えました。
「○○さん(さっきの党首)が駅前に来てるんだよ。
握手しに行きたいから早く行っておくれ」
はぁぁ??
何なんですか、一体?
全然知らないおばあちゃんですよ。
人のクルマに勝手に乗って何やってるんですか?
しかも党首に会いたいからって…駅前へって。タクシーじゃないよ。
「いや、あのね、これタクシーじゃないですよ?」
「何言ってんだ?息子が親の言う事聞くの当たり前だろう」
あ、あれ?
ボクを息子?
???
このおばあちゃん、もしかして…
ああ、そういう事か…。
近くの人、なんだろうな…。
頭の中で思い返してみると、
この近所の住宅で、そんな話を聞いた事があったような…。
「うん、わかった、ちょっと待ってて。
忘れ物したから。すぐ戻ってくるから」
そう言ってクルマを施錠して、急いでその家へ向かいました。
案の定、その家では今まさに、
おばあちゃんを探しに行こうとしているところで
ボクのクルマにいる事がわかってホッとしたようでした。
コメント
こんばんは~柏城さん!私の友人の話ですが、自転車で誰かの横を通り過ぎた時、挨拶をされたような気がした。無視してしまっては、失礼にあたると思い、引き返し、「こんにちは~さきほどは…」と深く腰を・曲・げ・た。しかし何の応答もない。ナゼ??顔を上げると等身大の立て看板。銀行とか携帯ショップに立っている満面の笑顔の…道行く人は、声を出して笑っている。この友人は、この他にもたくさん笑える話があって楽しい人なんです。誓って私自身の話ではないですよ。
( ^_^)/\(^_^ )オナカマ
Posted by: taka | 2006年6月 6日 20:06
>takaさん
こんばんは♪
カッカッカ(^^♪笑えますね~。友人ですよねぇ、友人(笑)けっしてtakaさんじゃないんですよね!フフフ。
しかし、引き返して挨拶するなんて良い人柄じゃないですか。うん、良い人だ(^^)
ぜひ、いろんなエピソード聞かせてもらいたいものです!楽しみにしてます☆
Posted by: 柏城 信一 | 2006年6月 7日 03:25