宅配便 痛快ドタバタ活劇!

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バックナンバーをまとめたページです。簡単な説明付き。


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2005年2月28日

vol.02 『ワンワン!パニック』

宅配はスポーツだ!
と、前回ちょっと書きましたがホントそうなんですよ。
配達に出ちゃえば、誰も助けてくれないしキツクても自分が頑張らないと終わらないし帰れない。

…でも行きたくない家ってあるんですよね。
あぁ誰か行ってくれないかな。

この家はアレだからなぁ…って。
アレの理由はたくさんあるんです。
その家の人が嫌いだとか、階段スゲェ上がるからとか。

今日はその極めつけのお話です。
その家の人には家族でも、嫌なんですよボクは。
だってホラ、題名にもあるでしょ?サルって…。

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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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『ワンワン!パニック』

ゴールデンレトリバーって知ってますよね?
毛並みの美しい大きい犬。おとなしくって凄く賢いんですよね~。
人にも良くなつくし、可愛いんですよね。

サルでもゴールデンは可愛いと思いますよ。
 
でもね、やっぱり配達する時に犬がいると、ちょっとビビりますよ。
だって賢ければ賢いほど、番犬になるでしょう?
番犬は家族を守るものでしょう?
そうするとボクらは外部の人間で犬から見ると侵入者ですもん。

実を言うとボクは、犬大好きなんです。
(と言いながら猫を飼っていますが… )
友達の家なんかで犬がいると、友達そっちのけで犬と遊んで帰ってしまうくらいです。

ところが配達では別です。ボクは侵入者ですから。
犬を飼っている家には玄関先に予防接種のステッカーが貼ってあります。
あと防犯のためもあるでしょうが「猛犬注意」のシールとかもありますよね。
そういうのを見るとやはり少し緊張しますね。

玄関先にインターフォンがあればいいんですが、
門の中にインターフォンがあると、まるで泥棒のように忍び足でそぉ~っと入ります。
いつでも逃げられるように。

まぁ大抵はおとなしい犬で安心するんですが、
中にはホント「ワンワン!」と吠える犬の家もあります。
でも、そういう家は鎖で繋いでいてイキナリ咬まれる事はあまり無いんです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところが、あの家は違うんです。
いや、キチンと鎖には繋がってるんです。
広い庭に大きい犬小屋付きで、犬には恵まれた環境でしょうか?

たぶん日曜日の昼下がりには、犬も鎖から開放されて広い庭を駆け回って遊んでるんでしょう。
そのくらい広い庭です。家も立派で門から玄関まで30mはあるくらいです。

しかし、門にインターフォンが無い。
配達のたびに門を入り、寝ている犬の横をそぉ~っとすり抜けて行かなければなりません。

ここの家を苦手なわけは門から玄関までの間が長いのと、犬の鎖が長くて犬の射程圏内を横切らないと玄関に辿り着けないからなんです。
いや、おとなしければいいんですよ。おとなしければ。

でもここの犬は違う!
ゴールデンじゃないのか?と疑ってしまうほど凶暴なんです。
侵入者を察知すると狂ったように吠える。

それも「ワンワン!」なんてもんじゃない。
「ガウオウッ!ガウッ!ガウッ!」って凄い勢い!

もう怖い!
犬じゃない。猛獣って感じ。
あの日も、そぉ~っと入って行ったんです。
うまく犬は寝ていました。

射程圏に入りました。
そぉ~っと…そぉ~っと…。

大丈夫!今日は気が付かれなかった。
さ、インターフォン押してっと。

「ピンポーン!」

犬がムクッと起き上がりました。
こっちを見てるけど寝ぼけてるのかまだ吠えない。
うぅ~んと伸び。
 
インターフォンから奥さんの声が聞こえた瞬間!吠え出した!
狂ったように

「グオォッ!ガウッガウッ!」

でもまだ大丈夫。完全には起きてない。
奥さん、さっさと出てきてくれぇ。早く帰りたい。

パタパタと廊下を駆けてくる音が聞こえると、犬はだんだんと本気を出して吠え出した。
あれは家の人にいいとこ見せたいからなんでしょうかね?
 
どこの家でも、家の人が出てくると本格的に吠えますよねぇ。
そして繋いである鎖を、これでもかっ!てくらいに引っ張って吠えまくるんです。
 
(早くぅ、早くぅ)
 
鎖が…。ビイーン・ビイーン!
 
(マジかよ。大丈夫だろうな、あの鎖。)

やっと奥さんが出てきました。
ほっとする間もなく犬が吠える吠える。

 
ビイィィィーン、ビィィィーン!


何か言ってやってくださいよ。奥さん。
頼むからおとなしくさせてよ。

しかし奥さんは、至ってマイペース。ニコニコです。
あぁ、もう! 早くハンコ貰って帰ろう。そう思ったその時!
 

ビイィィィーン、ビイィィィーン、バチッ!


「何ッ!?」

振り向いたボクの目に映ったのは、
スローモーションのように弾け飛ぶ鎖。
そして頭を低く、上目遣いに獲物(ボク?)をしっかりと見据えて、迫って来る犬。

(やべぇ!咬まれる!)

奥さんが叫びました。「××ッ!」おぉ~!英語だ。
外人かこの犬?

なんてくだらない事考えてる暇無い
!犬は全然怯まない。
どんどんと迫って来る。

「ガウッ!」犬が飛び上がった!

とっさにボクは届けに来たビールの箱を、ブンッ!と振り回してしまった。
 
「ガッ」

鈍い音がしました。

奥さんにヒットォ!
顔面直撃!
しかもノックアウト!

うわーっ、マズイマズイ。
客を殴っちゃったよ。
やっべー!
犬は益々吠えたてる。
(コノヤロー、よくもご主人様を!)ってとこか?

「スミマセンッ。ごめんなさいっ。起きてください。○○さんっ」

心配なんですけど、しゃがむわけにいかないんです。
ものすごい勢いで犬が吠え回って襲い掛かる隙を狙ってるから。

でもやっぱり心配。
吠えまくる犬にだんだん怒りが沸いてきます。

「うるせーっっ!この犬っ!」
 
犬に負けないくらいの大声出して一喝入れると、どうした事か一瞬でおとなしくなっちゃったんです。

(くそ、咬むなら咬め。お前のご主人様が心配なんだよ)

そしてしゃがんで「○○さん、大丈夫ですか?」と声を掛けました。
「ごめんなさいね…。大丈夫ですよ。」

ほっとしました。

その後、怪我の状態など聞いて病院に行く必要も無いという事なので、緊急連絡先を教えて近所にいる家族が帰るまで付き添って、帰る事にしました。

…不思議に犬は吠える事も無く犬小屋に入ったきりでした。

デポ(営業所)に帰ると、そのお客さんが後で来るという事を聞いて
(マズイ…やっぱりクレームだな。殴ったからクビだな。いやもしかすると傷害事件になっちゃうか?)

とビクビクしていると、ニコニコした奥さんが旦那さんと一緒に来ました。

「どーも、すいませんでした♪ご迷惑かけちゃって。」

開口一番これです。
こっちが謝る暇もないくらい二人でペコペコ。
重苦しかった雰囲気は吹っ飛びました。
怪我は全然無くて、倒れたのはビックリしちゃったからだって。

みっともなかったと謝りっぱなし。
逆にこっちは言葉が見つからなくて、

「いや本当こちらこそ…」

と繰り返すばかりで…。

後からでも何か具合が悪くなったら教えてくださいと言えたくらいで、終始ニコニコしながら帰って行きました。

その後、その家に配達があってもなんとなく行きづらいし、お客さんも恥ずかしいかもしれないので、他の配達員に行ってもらっていますが、犬は相変わらず吠えまくってるそうです。




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