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vol.27 『雪山の宅配アスリート 雪山編』

□前回のあらすじ□
 
 雪の為に交通網がマヒしてしまったある日
 お客さんからの「ウチには屋根あるよ」という電話に使命感を燃やし
 はじめたジョーさん。この雪の中を、配達に出掛けることを決意。
 街では、あちこちでスリップしたり雪にハマってしまっているクルマで
 溢れているのに本当に配達はできるのか?
 そしてその相棒に選ばれてしまったボク。
 
 そして配達先は、とんでもない場所にあった!
 二人は無事に帰ることができるのか?
 
 *「デポ編」バックナンバー
 
————–2005/02/26 発行 第27号———————–
 
 
 


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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『雪山の宅配アスリート 雪山編』
 シャンシャンシャン……。
 サンタクロースを乗せたトナカイのソリは一面の銀世界をゆっくりと
 進んで行きました。
 否、ボクたちの乗った配達のクルマの話です。
 チェーンを付けたクルマが雪道を走ると、なんだかこう、サンタのソリ
 みたいな感じの音がしませんか?
 サンタのソリの音っていうのもよく分かりませんが…。
 シャンシャンシャンって。ま、どうでもいい事ですけどね。
 ところで配達なんですが、むりやり連れて来られたわりに特に何事もなく
 順調にクルマは走る事が出来ました。
 
 デポを出たとたん、立ち往生しているクルマがいて
 「ホラ見たことか!」と、なったのですが、それ以降は特に何事もなくて
 順調にソリの音を聞きながら、ドライブしていました。
 辺りは一面の銀世界。
 他に通るクルマも無く、雪で覆われた街は普段見ている風景とは全く違っ
 ていて、なんだか新鮮な気持ちになります。
 雪は音を吸収するんでしょうか?違うのは景色だけではなくて、音もまる
 で違って聞こえます。いつもは騒音ばかりなのに…。
 
 「ジョーさん。結構順調に配達終わりそうですね。」
 「そうだな。帰りにラーメンでも食うか」
 「はい!」
 
 順調なドライブにホッとしていた時です。
 ジョーさんが信号でもない所で急にブレーキを掛けたのです。
 
 ん?
 運転席のジョーさんを見ると
 「むう…。」と前方を睨んでいる。
 ボクも前方を見た。
 いつもと違う銀白の景色。
 それに自分で運転していないから、一瞬ここの場所が分からなかった。
 そう。ここは運転手仲間に、こう呼ばれている場所。
 コークスクリュー。
 急な下り坂がうねうねと右に左にカーブしている。
 さらに左右の脇に入るための道路は、その坂の傾斜に合っていなくて
 水平に脇へ続いているために、メインのコークスクリューは
 左右にカーブしているだけではなく
 上下にもうねっている道路になっているんです。
 …雰囲気伝わってますか?
 え~と、そうですねぇ…。スキーのモーグル競技のコース。
 そんな感じで思ってください。
 そのコークスクリューを前に、ジョーさんは唸っているんです。
 最初ボクには何を唸っているのか分からなかった。
 何故なら普段でさえ、コークスクリューを通るときは
 クルマがバウンドしたりカーブの上下のうねりで
 予想もしない方向へクルマが傾くほどの道路なんです。
 だからこんな雪の日にまさかここを下るとは思いもよらなかったからです。
 ところが…。
 「むう…。柏城。覚悟はいいか?」
 へ?…いいって、何が?
 覚悟はいいかってそんな言い方やめてくださいよ。
 何か「決死」って感じするじゃないですか。
 さっさと配達終わらせてラーメン食べましょうよ。
 まさかコークスクリューを下るわけじゃないでしょ?
 え?
 まさか?……下るの?
 ジョーさん…?
 「むう…。」
 ブルルルウゥゥゥゥ~ン…。
 や、やめてよ。噴かすなよ。え?
 嘘だろ?
 そしてクルマはゆっくりと動き出し…
 「ち、ちょっと!ね、嘘だろ?無理だって!」
 ガクン。
 「やべでぐださ~いい!!」
 コークスクリューに入ったとたん、急な角度になるクルマ。
 そのままゆっくりと……
 いや!ジェットコースターのように滑り出したのです!
 最初の「コブ」に前輪がガクッと乗り上げた瞬間、変な体勢になるクルマ。
 真横を向いたと思えば、次のコブでまた前を向き、さらに次のコブで…
 まったく予想も出来ない動きをしながらクルマは滑り続けてしまったので
 す!
 
 「ぬおーーーーーーっ!」
 叫びながらハンドルを切るジョーさん。
 「やーめーてーっ!!停めろーっ!」
 懇願するボク。
 コークスクリューは途中で大きなカーブになっています。
 そのカーブがもう目前に迫ってきていたのです。
 カーブの外側は崖です。
 「うわーっ!死ぬー!」
 「うごごーっ!」
 コントロールの効かないクルマが崖に向かって滑り続けていきます。
 もうダメか!?と思った時、またコブに乗り上げました。
 ガクッ!!
 そして脇道のひとつへ突っ込んだのです。
 その道は工事の資材置き場みたいに使われている場所でした。
 住宅の入り口ではなくて本当によかったです。
 それにその脇道は少し上り坂になっていたので
 どこにもぶつからずに済んだし。ホッとしました。
 「…ここまでか。」
 ドアを開けて外に出て状況を見たジョーさんが呟きました。
 カチンときたボクは、ちょっと離れた場所で雪を蹴りながら
 (あぁ~ん?何言ってんだアンタ。アンタの責任だろうが、えぇ?!
  聞いてんのかよ、アンタだアンタが原因なんだっつーの!!)
 と、呟いていました。
 そこにジョーさんがギロリとこっちを見て
 「柏城!」
 その瞬間「ハイっ」と直立不動になってしまう自分が情けない…。
 「歩いて運ぶぞっ!客が待っているんだ」
 「なんだってぇ?」
 もうやめてくれよ~。
 あとどれくらい距離があると思ってるんだよ~。
 無理だって。ホント。
 「さぁ、行くぞ。荷物を出せ」
 何でだよ。
 自分で行って来いよぉ。
 「なんか言ったか?」
 「…いえ」
 「じゃあ、行くぞ!」 
 
           ☆というわけで、次回いよいよ最終章!につづく!
 



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