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vol.50 『おんぶ渡しはウキウキ赤面』

 まぁ、なんと言いますか…アレですね。
 宅配便みたいな一日中外を廻る仕事って色々な出来事に遭遇しますね。
 今回も強烈な出来事に遭遇しちゃいました。
 実はこのお話、メルマガにするのどうしようかなぁ~と思ったんです。
 理由は「あまりにも嘘っぽい!」からなんです。
 ちょっと有り得ないくらいの出来事なんで
 このお話を書いてしまうと、今までのお話も作り話みたいに
 感じられてしまうかなぁ~と一抹の不安があったのです。
 でも、事実ですし…これだけ強烈な出来事を埋もれさせてしまうのは
 もったいないと考え直して書くことに踏み切りました!
 ある意味、人気シリーズのボクのドジ話編です。
 
 
————–2005/12/03 発行 第50号———————–
 


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■ハンドルを握ったサルと愉快な仲間たち
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 『おんぶ渡しはウキウキ赤面』
 
 う~…なんでここで工事なんかやってんだよ~。
 狭い道の地域で、配達するのに唯一のクルマを停められる
 ポイントなのになぁ。
 仕方なく遠くにクルマを停めて戻ってくると
 目の前の道路は完全に掘り起こされていて
 あらわになった土はグショグショにぬかるんでいます。
 そのために歩行者のために細長い板が渡されていました。
 ま、仕方ない。
 工事なんだから。
 そう思って、ボクはその細長い板の上をヒョイヒョイと渡って行きました。
 渡りきった時、突然おばあちゃんに声を掛けられました。
 「お願いします」
 ちょっとしわがれている声で
 ボクにスーパーの袋を差し出しています。
 (ん?何だ?)
 最初、ボクは意味がわからなかったのですが
 あぁ、そうか!と合点がいきました。
 おばあちゃんからすると、
 この工事中のために渡されている板は細すぎて怖いんじゃないか?と。
 そこをスーパーで買物した袋を提げて渡るのは自信がないから
 ボクに袋を持ってもらって向こうへ渡りたいのかなと。
 勝手な想像ですが、ありえない話ではないですよね?
 そう思ってボクはおばあちゃんに尋ねました。
 「荷物向こうに持っていけばいいんですか?」
 コクと頷くおばあちゃん。
 ボクは袋を受取り、ちょっと迷いましたが手を引いてあげようかなと
 手を差し出しましたが、おばあちゃんは下を向いて歩き出しそうに
 していたので、ボクはそのままヒョイヒョイと向こうへ渡りました。
 振り返るとおばあちゃんはさっきと同じ位置でした。
 
 (あ、あれ?)
 自分で渡ろうとしたんじゃなかったのか…。
 ボク一人で渡って来ちゃって悪かったかな?
 すると、おばあちゃんは袋をそこへ置けという仕草をしました。
 「ここに置いていいんですか~?」
 うんうんと頷くおばあちゃん。
 なるべく汚れないような所へ袋を置いて
 またボクはおばあちゃんの方へ、板を渡って行きました。
 
 ところが、おばあちゃんがまた言うのです。
 「お願いします」
 んん~?今度は何だろう?
 袋はもう持ってないし…。
 すると、なんとおばあちゃんは両腕を前に出しました。
 これは…まるで「おんぶ待ち」の状態ではないですか!
 おんぶして向こうまで連れて行けと。
 そういう事ですか?おばあちゃん。
 「…おんぶ、ですか?」
 「お願いします」
 そう言って、「ほれほれ」みたいな感じで腕を振ってます。
 むう…仕方が無い。
 この場合ボクがおんぶしなければならないのか…。
 仕方なく、おばあちゃんに背中を向けると
 突然ズシッとおばあちゃんがおぶさってきました。
 (け、結構重いね…おばあちゃん…。)
 さすがにヒョイヒョイというわけにはいきませんでしたが
 無事に板を渡り終えると、おばあちゃんはボクの背中からスッと降りて
 
 「まったく…こんなに人の多い通りで工事すんなやっ!」
 と、言い残しスタスタと歩いて行ってしまったのです。
 しばし呆然のボク…。
 歩けるじゃん…。あんなに元気よく。
 しかもボクは工事の人じゃないぞ…(泣)
 なんだか釈然としない気持ちで、また板を渡って行くと…
 今度はすでに「おんぶ待ち」状態の小学生の女の子が!
 「おねがいします!」
 あ、あのね…。
 ボクは渡し舟じゃないんだからね…。
 「え~とね、おにいちゃんは工事の人じゃ…」
 「おねがいします!怖くて渡れないの!」
 「あ、そう…」
 本当にボクってヤツは……。
 はぁ…と思いながら背中を向けて女の子を背負って向こうへ渡りました。
 女の子を降ろすと、さっきのおばあちゃんとは違い
 「ありがとうございました!」
 と元気良くペコリと頭を下げて走り去って行きました。
 
 うん、まぁいいか…。
 なんだか唐突に渡し舟みたいな役割になってしまっているけど
 ありがとうとか言われるといい気持ちです。
 お、そうだ!
 こんな事やってる場合じゃないんだった。
 自分の荷物の配達があるし、クルマも遠くに停めちゃって心配。
 さっさと配達済ませなくちゃ。
 ボクは再び、板をヒョイヒョイと渡って行ったのですが
 向こうへ着く時に、思わずひっくり返りそうになりました。
 なんと、そこには制服を着た女子高生が「おんぶ待ち」で
 ボクを待っていたのです!
 ウッソォ~!!
 マジでぇ~!!
 おばあちゃんや小学生の女の子なら、まだ話はわかりますが
 女子高生ですよ!女子高生!
 こんな配達やってる汗臭いオジサンに「おんぶ待ち」の体勢って何?
 気のせいか、その目が「お・ね・が・い」って言っているようで…。
 うわっ!嘘だろ~、そんな目で見ないで~。
 オジサン嬉しくなっちゃう…じゃなくて、
 あなた、嫌じゃないの??
 今をトキメク女子高生じゃないですか!
 こんなオジサンにおんぶされちゃぁいけないな。
 と、思っていたのですが
 どうやらマジのようで…。
 「向こうへ連れて行ってくれますか?」
 ウホッ!
 いいんですか~!
 こんなオジサンでいいんですか~?
 しかし、よく見ると片足の白いソックスが包帯…。
 あ、怪我してるの?
 「授業でバスケやってる時に…」
 はぁ、そういう事ですか…。
 ま、まぁボクも人の役に立てるのなら、やぶさかではないですが…。
 仕方なくですよ!読者の皆さん!
 ええ、そうです。
 仕方なくボクは背中を向けてあげたんですからね!
 ジュルッ…
 たまらん…。
 あ、いや本当に仕方なくボクも「おんぶ受け体勢」に入ったんですよ。
 
 肩から女子高生の腕が伸びてきて…
 背中にふわっとシャンプーの匂いが…
 そしていよいよ、「おんぶ受け体勢」で待ち受けるボクの両手に
 女子高生のお、お、お、お尻が…
 触りそう…という時に、
 「ブワッハッハッハ~ッ!スケベ!!」
 大爆笑の笑い声!!
 ハッとして振り向くと、工事のクルマの中から作業員がこっちを見て
 大笑いしてるじゃありませんか!
 一気に素に戻るボク。
 うひゃ~、恥ずかしい!
 きっと鼻の下伸びまくりの顔してるんでしょう。
 ニタニタしちゃってさぁ…。
 情けない…。
 女子高生も恥ずかしかったのかもしれません。
 サッと腕を引き、ボクから体を離しました。
 「あ、あのやっぱり…迷惑になるから…」
 なんだか、こう言われちゃうと後に引けなくなっちゃうんですよねぇ。
 「じゃ、手を繋いで行こう」
 
 「いいんですか?」
 「その足じゃ…ね」
 そうして、女子高生の手を取って静かに板を渡っていきました。
 さっきまでのスケベ心は、吹っ飛んでいました。
 
 「ありがとうございました」
 そう言って女子高生はペコリと頭を下げてヒョコヒョコと
 歩いていきましたが、なんだか妙な爽快感。
 
 たまには、工事もいいもんですね。
 
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 しかし、工事の人たちに見られてたのは思い返しても恥ずかしい!
 鼻の下、伸びまくりだもんなぁ~。
 スケベ丸出しの顔だったんだろうなぁ。
 ま、終わった事です。
 気を取り直して次の配達に向かいましょう。
 ええと…次に配達する家は…
 なんだってぇ~!!
 これって…さっきの工事現場宛てじゃないかッ!!
 …恥ずかしくって配達に行けないよ~(泣)



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